味方がいない 2
つづき
結局打ち上げはそいつの努力のかいあって、会費がめちゃくちゃ高い、そして人数のわりにはめちゃくちゃ広いところでやることになった。前日に。そいつの努力のかいあって、全員、打ち上げがはじまるまで、二時間半持て余したらしい。そいつの努力のかいあって。
妻は言った。
飲み会ひとつまともに仕切れないのに、随分とひどいこというな、とは思った。でも相手はこういう人なんだ、と思うことにした。もめたくないし。
僕は
いやいや、失礼な奴にはきれろよ。なんで自分の心の中まで丸くおさめようとするんだ。
といった。しかし、実際にそう思ったわけではない。女性はこういうとき、味方をしてほしいだけだ。どちらが悪い、なにが正しい、じゃなく、ただ、
いやなやつもいるもんだね。君はがまんしたのか、えらいね
そういう言葉がほしいだけ。でもできなかった。
案の定、妻は
ちょっと味方してほしいだけだったのに
とぐずりだした。一生懸命なぐさめた。しかし心は闇の中だ。妻のことなかれ主義は、ブログに人の悪口を書き散らして、精神の崩壊をふせいでいた矮小な僕を奈落に突き落とした。
僕はそれ以降、変な顔をしているらしい。無理に笑っていると。けど仕方ない。そんなことは妻にいえるはずがないし、そんなことを妻にいうよりは、こんどこそちゃんと味方をしてやりたいのだ。そのために
僕はそっと、妻を自分の味方リストからはずし、クライアント名簿にいれた。
おわり