siwee 10

田舎暮らしを毎回10分にて

僕が田舎で暮らすまで 6

つづき


もうひとつあるとすれば、周りのバンドマンのある言葉だ。(すみません、やっていたこととは、音楽でした)


彼は、メインで所属し、活動していたバンドが解散してからは、そのバンドから派生する形で結成されたバンドに所属している。しかし当時、どちらかというとそれ以外のサポートでの演奏の方が活動としては活発になっていた。


彼がサポートしているバンドは七つくらいあり、そのうちの一つがアルバムを出せることになった。レーベル自体は小さいし、自己負担の割合もまあまああるが、今メジャーでかなり活躍しているバンドを手掛けた人が一枚噛んでいるとかで、百パーセント悪い話でもない。


そのタイミングで彼はバンド側から正式なメンバーになることを打診されたのだが。。。断ってしまったらしい。サポート活動を制限されるわけでも、所属バンドからの脱退を要求されたわけでもない。ただ籍を置いてほしい、という要求だ。まあ、もちろんアルバムが売れればなんらかの制約はついてくるのだろうが。。。



彼いわく


楽器を演奏するのは楽しいが、バンドのために集客に力を入れたり、長いツアーをしたり、そういう気力がもうない。バンドで成功できればいい、とは思うが、バンドに力を入れるよりは地元の楽器教室の講師の面接を受けようかとも思っている。


とのこと。

うらやましい。アルバムデビューの話もそうだが、何よりその心境がうらやましかった。彼は、音楽とずっと付き合っていくことにしている。そして、そこには自分の音楽があり、成功とか失敗とか、そういう観点がないのだ。

僕の音楽は、社会的に成功しなければクズの騒音だが、彼の音楽は、彼の幸せの一部であれば、それで
もう、世界中でアルバムが売れまくることに匹敵する。


自分はそうなりたいけど、なれない。


そう悟ったとき、自分のなかで、これからはなんのために生きるのかがはっきりとしてきた。



つづく